福岡地方裁判所 昭和49年(わ)85号 判決 1974年5月21日
本店所在地
福岡県大川市大字向島一九九八番地
有限会社井上材木店
右代表者代表取締役
井上喜利
本籍ならびに住居
同市大字向島一九九八番地の四
会社役員
井上喜利
大正一三年二月四日生
法人税法違反被告事件
検察官山口一誠出席
主文
被告人有限会社井上材木店を罰金一六〇万円に処する。
被告人井上喜利を懲役三月に処する。
被告人井上喜利に対しこの裁判確定の日から三年間、右刑の執行を猶予する。
訴訟費用は、全部被告人井上喜利の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人有限会社井上材木店(以下単に被告会社という)は、福岡県大川市大字向島一九九八番地に本店を置き、製材ならびに木材の販売を目的とする資本金一〇〇万円の会社であり、被告人井上喜利は、同社の代表取締役として同社の業務全般を統括しているものであるが、同被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、昭和四五年四月一日から昭和四六年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額は、二、四七二万七、五二〇円で、これに対する正当に納付すべき法人税額は八五七万七、〇〇〇円であるのにもかかわらず、公表経理上架空材料費を計上して簿外預金を設け、さらに同預金から生ずる利息を簿外とする等の不正手段により、その所得の一部を秘匿したうえ、昭和四六年五月三一日、同市大字榎津字大溝三二五番地の一所在の大川税務署において、同税務署長に対し、被告会社の同年度における所得金額が九二九万九、〇一四円で、これに対する法人税額が二九〇万七、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同事業年度の右差額法人税五六六万九、八〇〇円を免れたものである。
(証拠の標目)
一、被告人井上喜利の当公判廷における供述(被告会社の代表者としての資格を含む)
一、被告人井上喜利の検察官に対する供述調書(同右)
一、被告人井上喜利の収税官吏に対する質問てん末書六通(同右)
一、被告会社代表取締役井上喜利および税理国武龍夫連名の上申書二通
一、被告会社代表取締役井上喜利および井上愛子連名の上申書ならびに確認書各二通
一、登記官認証の登記簿謄本
一、山本亮、山崎利雄、野々下兼樹、井上愛子(二通)の収税官吏に対する各質問てん末書
一、山本木材産業株式会社取締役社長山本亮および長沢輝子連名の上申書
一、株式会社西日本相互銀行大川支店長、同銀行佐賀支店長、同銀行久留米支店長、同銀行渡辺通支店各作成の証明書
一、株式会社住友銀行佐賀支店長作成の証明書
一、株式会社筑邦銀行大川支店長作成の証明書
一、国税査察官作成の調査報告書写
一、収税官吏作成の脱税額計算書
一、押収してある被告会社の総勘定元帳、同仕入、買掛金台張、同手形受払帳、同支払手形決済ズミ綴各一綴(冊)、同入出金振替伝票、請求書、領収書綴二綴、同入出金、振替伝票綴二綴、同請求書、領収書綴一綴、同名刺一枚、同法人税決議書綴一綴(昭和四九年押第六一号の一ないし一一)
(法令の適用)
被告人井上喜利の判示所為は法人税法第一五九条第一項、第七四条第一項第二号に該当するので、所定刑中懲役刑を選択し、その所定刑期の範囲内で同被告人を懲役三月に処し、情状により刑法第二五条第一項を適用してこの裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予し、また判示所為は被告会社代表者である被告人井上喜利が被告会社の業務に関し行なった違反行為であるから法人税法第一六四条第一項に従い被告会社に対して同法第一五九条第一項所定の罰金刑を科すべく、その所定罰金額の範囲内で被告会社を罰金一六〇万円に処し、訴訟費用は刑事訴訟法第一八一条第一項本文に従いこれを全部被告人井上喜利に負担させることとする。
よって主文のとおり判決する。
(裁判官 池田久次)